[23冊目]
読書感想文
『スイッチを押すとき』

著者:山田悠介

今月は約13年ぶりに再会した本について書いていこうと思います。

まずはこの本を読むことになった経緯から。

中学生の授業の休憩中に

「夏休みの読書感想文の本、何読むの?なんか決めた?」

「いや、まだです。」という会話から始まり、

後に、その子のお母さんを巻き込んで、

「先生、この子は本ほとんど読んだことないんです。この子の読書感想文を添削してあげてください」という流れになり、まずは本を決めることになりました。

そこで思いついたのが、自分が中学生の時に読んでいた本で、ちょうど彼の趣味にも合うかもしれない非現実的な話の、この本でした。

本屋さんに駆け寄り、早速購入して、「読んでくれるかな~?」と思いながら、本人に渡しました。

夏休みの中盤ぐらいまでに読んで、その後に読書感想文を書くようにと宿題を出しました。そしてその宿題はそっくりそのまま自分に課しました。

たまに授業の開始前に「あの本、どこまで読んだ?」と聞くと、なんとなんと僕よりも読み進めていて、本をあんまり読んだことがない彼がよく読んでるなと嬉しくなって褒めました。「先生は今、ここまで読んでるけど、もうそこまでいったのか!やるな!」と。

そして、とうとう本を読み終えようと決めたその日がきました。自分もなんとか本を読み終えていました。本の終盤になればなるほど、「あれ、こんなんだったかな?」と約13年ぶりに読んだこの本の内容をほとんど覚えていなかったことにかなり驚いた。「こんなにも記憶はあいまいなものなんだな」と改めて感じた一冊だった。そんな感想を覚えながら、やはり気になることは一つでした。

彼は読んだのだろうか?と。

そんな思いで、彼の家に着いて、確認してみると、彼はしっかりと読み終えていた。宿題はどちらかというと最後までやりきれない彼を見てきた分、正直驚きだった。と同時にとても嬉しかった。

本を読み終えた彼とこんな感じの会話をした。

私「どうだった?いろいろ思うことはあった?」

彼「本を読んでいて、いろんな場面とか、めっちゃ想像しました。」

私「おお、いいねえ!○○(彼の名前)が感じたこと、見えた風景って、○○にしかみることができないものなんよ。先生が想像したある場面も先生にしか想像できない。だから○○が想像した風景は○○だけのもの。すごい素敵なことだと先生は思う。」

今文字におこしてみると、もっと言ってあげたい言葉とかあるなと反省が思い浮かんだのですが、師匠や読書てらこやで言われてきたような読書の魅力を自分の言葉で伝えました。

それを聞いた彼の表情を見て、彼が読書の素敵さや魅力を少しでも受け取っているだろうと感じました。そうでなくとも、僕はそう信じています。

そして、テスト対策に時間を使いすぎて、実は感想文の添削をする間もなく、提出の期間がやってきてしまい、彼の書いた読書感想文はまだ読んでいません。

彼の書いた読書感想文を僕は楽しみに待っている。

印象に残った言葉

今回はどちらかいうと「この言葉、いいな」と感じるよりも、「この文章、いいな」と思ったところの紹介です。

そう思った瞬間、改めて感じた。自分は、真沙美が好きだったのだと・・・。

涼太はずっと、彼女の顔を見つめていた。

夜はゆっくりと、明けていった。

著者:山田悠介

章の最後をこれで締めくくっている。この物語の背景などはあえて説明しませんが、それも相まって、胸がきゅっと締め付けられてしまいました。つい想像してしまった。ゆっくり明けていったであろう夜のことを。

このようにいつの間にか想像させられている。というのはものすごく特別な表現力なのかもしれない。

「山田悠介すげえ!!」

中学生に思っていた感想とは違う意味でもう一度そう思った。

この本を僕に紹介してくれた友人が「山田悠介の表現力はいい」と言っていたからか、わからないが、僕はその表現力にもう一度人生で触れる機会を作った。

何かのめぐり合わせかなとロマンチックなことを考えているあたりで今回は終わりにしようと思います。

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